サッカレーのバリーリンドン
サッカレーの原作小説
「バリー・リンドン」は、1844年にウィリアム・メイクピース・サッカレーによって書かれたピカレスク小説「バリー・リンドンの幸運と不幸、彼自身の物語による」を原作としています。小説は、18世紀のヨーロッパを舞台に、アイルランドの田舎の青年レドモンド・バリーが、野心と幸運、そして策略によって、上流社会へと成り上がっていく様を描いています。バリーは、持ち前の美貌と巧みな話術を駆使し、富と名声を求めて、戦争、賭博、恋愛など、様々な冒険に身を投じていきます。
キューブリックによる映画化
スタンリー・キューブリック監督は、1975年にサッカレーの小説を映画化し、「バリー・リンドン」として公開しました。映画は、原作小説の壮大なスケールと、主人公バリーの波乱に満ちた人生を、圧倒的な映像美と緻密な時代考証によって再現しました。キューブリックは、自然光のみを用いた撮影や、当時の絵画を思わせる構図など、独自の映像表現を追求し、高い評価を得ています。
映画の時代背景
映画「バリー・リンドン」は、18世紀後半のヨーロッパを舞台としています。この時期は、啓蒙主義の影響が広まり、社会や文化が大きく変化した時代でした。また、七年戦争やアメリカ独立戦争など、ヨーロッパ列強による植民地争奪戦争が激化し、世界地図が塗り替えられていく激動の時代でもありました。映画は、こうした時代背景を、衣装や建築物、風俗などを忠実に再現することで、観客を18世紀の世界へと誘います。
映画のテーマ
「バリー・リンドン」は、野心、階級、愛、運命といった普遍的なテーマを扱っています。主人公バリーは、野心に突き動かされ、手段を選ばずに出世を目指しますが、彼の成功は、つねに幸運と他人の犠牲の上に成り立っています。映画は、バリーの栄光と転落を通して、人間の欲望と愚かさ、そして運命の残酷さを描き出しています。