コンラッドの闇の奥を読む
語り手と語り
「闇の奥」は、語り手であるチャールズ・マーロウが、コンゴ川を遡って象牙会社の代理人であるクルツという男に会いに行く物語です。マーロウの語りは、直接話しかける相手がいるわけではなく、過去の出来事を振り返る形で進んでいきます。
物語は、テムズ川に停泊したネリー号の甲板上から始まります。マーロウは、そこで他の船乗りたちと共に日が暮れるのを待っていますが、この時のテムズ川の様子が、かつて自分が経験したコンゴ川の風景と重なります。そして、マーロウはコンゴでの体験を語り始めます。
植民地主義と人間の闇
「闇の奥」は、19世紀末のヨーロッパによるアフリカ植民地支配を背景に、人間の心に潜む闇や悪を描いています。コンゴ川を遡るにつれて、マーロウは、象牙会社の非道な搾取や、白人たちの狂気と堕落を目の当たりにします。
クルツは、元々は教養あふれる理想主義者でしたが、コンゴの奥地で絶対的な権力を握るうちに、残虐な行為に手を染めるようになります。彼は、現地の人々を奴隷のように扱い、恐怖で支配するようになります。
象徴主義
コンラッドは、「闇の奥」の中で、様々な象徴を用いて、人間の心の奥底や、植民地主義の本質を描いています。例えば、コンゴ川は、人間の意識の深層や、未知の世界への旅路を象徴しています。また、クルツは、人間の持つ野蛮性や、権力への欲望を体現する存在として描かれています。
作中に登場する霧は、先行き不透明な状況や、登場人物たちの心の迷いを象徴しています。一方、闇は、人間の無知や、悪の根源を象徴しています。