コンラッドの闇の奥の対極
楽観主義と進歩の物語:ヴォルテールの「カンdide」
ジョセフ・コンラッドの「闇の奥」は、植民地主義の残虐性と人間の心の暗部を探求した、深く悲観的な作品として広く認識されています。その対極に位置する作品としては、啓蒙主義の理念を体現し、楽観主義と進歩のビジョンを提示するヴォルテールの風刺小説「カンdide」が挙げられます。
善と理性の勝利:人間の可能性に対する対照的な視点
「カンdide」は、主人公のカンdideが、楽天主義の教えを信じ込みながらも、世界を旅する中で数々の苦難に遭遇する物語です。戦争、宗教的偽善、人間の残酷さなど、ヴォルテールは当時の社会を風刺的に描きながらも、最終的には理性と教育を通じて人間社会が改善される可能性を提示しています。これは、「闇の奥」で描かれる、人間の残虐性と道徳的腐敗という暗いビジョンとは対照的です。
単純化された世界観:複雑さへの欲求
「カンdide」は、その風刺的な性質上、登場人物やプロットが単純化されている点が指摘できます。これは、「闇の奥」に見られる、人間の心理や植民地主義の複雑さを探求しようとする姿勢とは対照的です。コンラッドは、明確な答えや解決策を提供することなく、読者に倫理的なジレンマと人間の心の深淵について熟考することを促しています。
異なる時代背景:啓蒙主義とモダニズム
「カンdide」と「闇の奥」の対照的な視点は、それぞれの作品が書かれた時代背景の違いを反映しています。「カンdide」が書かれた18世紀は、理性と進歩を重視した啓蒙主義の時代でしたが、「闇の奥」が書かれた19世紀末は、植民地主義の現実と人間の残虐性に対する認識が高まり、モダニズムの潮流が生まれた時代でした。このように、二つの作品は、それぞれ異なる時代の思想や価値観を反映しており、人間の可能性と闇に対する対照的な視点を提示しています。