## コンラッドの「ノストロモ」の普遍性
ノストロモ:人間の心の反映
コンラッドの「ノストロモ」は、単なる海の冒険物語を超越した作品です。小説の舞台となる老朽船ノストロモは、まさに人間社会、そして人間そのものを象徴する存在として描かれています。船体にこびりついたフジツボや、錆びついた鉄骨、薄汚れた甲板は、人間の抱える弱さ、醜さ、そして避けられない衰退を如実に表しています。
登場人物:善と悪の曖昧さ
「ノストロモ」には、船長をはじめ、一等航海士、船医、密航者など、様々な立場の人物が登場します。彼らは皆、それぞれの欲望、信念、恐怖を抱え、複雑に絡み合いながら物語が展開されます。コンラッドは、登場人物たちの内面を深く掘り下げることで、善悪二元論では割り切れない人間の複雑さを浮き彫りにします。
普遍的なテーマ:貪欲、恐怖、裏切り
「ノストロモ」は、人間の根源的なテーマである貪欲、恐怖、裏切り、そして愛と憎しみが渦巻く世界を描いています。閉鎖的な船上という極限状態において、登場人物たちはそれぞれの欲望と倫理観の間で葛藤し、時に残酷な選択を迫られます。これらの普遍的なテーマは、時代や文化を超えて、現代社会にも通じるものと言えるでしょう。