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コンドルセの人間精神進歩史の評価

コンドルセの人間精神進歩史の評価

コンドルセの思想と時代背景

マリ・ジャン・アントワーヌ・ニコラ・ド・カリタス、マルキ・ド・コンドルセ(1743-1794)は、フランスの啓蒙主義を代表する数学者、哲学者、政治家でした。理性と科学の進歩による人類の幸福と完成を確信し、その信念を体現した著作が『人間精神進歩史略論』(1795年)です。

コンドルセは、旧体制の矛盾が深刻化し、フランス革命が勃発する中で、その理想を実現すべく積極的に政治活動に参加しました。しかし、革命の混乱の中でジロンド派として活動した彼は、1793年に逮捕され、翌年獄中でこの世を去りました。皮肉にも、彼の代表作である『人間精神進歩史略論』は、恐怖政治のさなかに出版されました。

『人間精神進歩史略論』の内容と特徴

本書は、過去から未来へと続く人類の歴史を、精神の進歩という視点から描き出した壮大なスケッチです。コンドルセは、人類の歴史を10の段階に分け、それぞれの時代における精神の進歩を、科学、芸術、道徳、政治など、多岐にわたる分野にわたって論じています。

彼は、人間精神は本質的に理性と善性を備えており、歴史の進歩とともに、迷信や偏見、不平等や抑圧といった障害を克服していくと主張しました。そして、教育や科学の発展を通じて、人類はさらなる幸福と完成へと向かうことができると楽観的な未来展望を提示しました。

『人間精神進歩史略論』への評価

本書は、出版当時から大きな反響を呼び、啓蒙主義の理念を広く普及させました。理性と進歩に対する揺るぎない信念、そして未来への希望に満ちたメッセージは、多くの人々に感銘を与え、後の世代の思想家や革命家たちにも多大な影響を与えました。

一方、コンドルセの描く理想主義的な歴史観や進歩史観は、20世紀以降、歴史の現実や人間の複雑さを直視する立場から批判されることも少なくありません。特に、全体主義や環境問題など、20世紀以降顕在化した問題を前に、彼の楽観主義は、現実を無視したナイーブな思想として映ることもあります。

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