コンドルセの人間精神進歩史の構成
序論
序論では、コンドルセは本書を執筆するに至った動機や目的、そして本書全体を通じて展開される主要な主張を簡潔に述べています。人間精神は常に進歩を続けてきたのであり、今後も進歩し続けるとするコンドルセの主張は、フランス革命の混乱と恐怖政治のさなかに書かれた本書において一筋の希望を提示するものでした。
第一篇 理性 faculties の発達に関する一般的考察
この篇では、人間の理性 faculties がどのように発達してきたのかを、歴史的な事例を交えながら考察します。言語の起源と発達、文字の発明、理性 faculties の進歩における障害などが議論されます。
第二篇 ギリシャ人出現以前の人間精神の歴史
人類の歴史をギリシャ文明以前と以後に大別し、この篇では前者を扱います。狩猟、漁撈、牧畜といった初期の人間の生活様式、農耕の開始による定住生活への移行、そして家族や社会の形成過程について考察を加えます。
第三篇 ギリシャ人からローマ帝国滅亡までの間の、科学と哲学の進歩
この篇では、古代ギリシャにおける哲学と科学の隆盛を皮切りに、ローマ帝国におけるそれらの発展と普及、そしてキリスト教の登場による影響について考察します。
第四篇 ローマ帝国滅亡から印刷術の復興までの間の、科学と哲学の進歩
ローマ帝国滅亡後の西欧世界における知性の衰退と、イスラム世界における古代ギリシャ文明の継承について述べ、やがて十字軍やアラブ文化との接触を通じて西欧世界に再び古代の学問がもたらされる過程を辿ります。
第五篇 印刷術の発明から、科学と哲学が偏見のくびきから解放され始めた時代まで
この篇では、印刷術の発明が知識の普及に革命をもたらしたことを論じます。また、宗教改革やルネサンスといった重要な出来事を取り上げ、それらが人間精神の進歩にどのような影響を与えたのかを考察します。
第六篇 フランシス・ベーコンからデカルトまで
17世紀の哲学者、フランシス・ベーコンとデカルトに焦点を当て、彼らの思想がそれまでのスコラ哲学を打破し、近代科学の基礎を築いたことを論じます。彼らの思想が、経験と理性に基づく新しい知識の探求方法を確立したことを解説します。
第七篇 デカルト以後、フランスにおいてこの哲学が一般的な意見の体系となるまでの間の、科学の進歩
デカルトの思想が、フランスを中心にヨーロッパ全体に広がっていく過程を辿り、ニュートン力学の成立など、17世紀後半における科学の進歩を概観します。また、科学アカデミーの設立など、科学研究が社会的に組織化されていく様子も描かれます。
第八篇 啓蒙時代における哲学の進歩
18世紀の啓蒙主義思想に焦点を当て、モンテスキュー、ヴォルテール、ルソーといった代表的な思想家たちの業績を考察します。彼らの思想が、理性、自由、人権といった価値観を広め、政治や社会の改革運動を促したことを論じます。
第九篇 人間の将来における進歩について
最終章では、これまでの歴史的な考察を踏まえ、人間精神の未来における進歩の可能性について論じます。教育の普及、貧困や戦争の克服、科学技術の発展などを通して、人類はより幸福で進歩した社会を実現できるとコンドルセは主張します。
以上が、「人間精神進歩史」の構成です。