## コンドルセの人間精神進歩史の世界
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序論
コンドルセは本書をフランス革命のさなかに執筆し、恐怖政治の只中で命を落としました。彼の遺稿は妻と友人の手によって1795年に出版されました。本書は単なる歴史書ではなく、理性と科学の進歩が人類を幸福へと導くという啓蒙主義の理想を体現した書と言えるでしょう。コンドルセは、過去の歴史を振り返りながら、人間精神がどのように進歩してきたのかを明らかにし、未来への希望を提示しようと試みました。
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歴史の10段階
コンドルセは人類の歴史を10の段階に分け、それぞれの段階における人間精神の発達を詳細に記述しました。
* **第一期**: 人類の誕生から言語の発明まで
* **第二期**: 言語の発明から文字の発明まで
* **第三期**: 文字の発明からギリシャ文明の開花まで
* **第四期**: ギリシャ文明からローマ帝国の分裂まで
* **第五期**: ローマ帝国の分裂からルネサンスまで
* **第六期**: 印刷術の発明から哲学と科学の分離まで
* **第七期**: デカルトからフランス革命まで
* **第八期**: フランス革命から
* **第九期**: 未来における人間精神の進歩
* **第十期**: 未来における人間精神の進歩の限界
彼は、各段階における重要な発明や発見、思想や社会制度の変化を分析し、それらが人間精神の進歩にどのように貢献してきたのかを明らかにしました。例えば、文字の発明は知識の蓄積と伝達を飛躍的に発展させ、印刷術の発明は知識の普及を促進し、より多くの人々が教育を受ける機会を得ることに繋がりました。また、ルネサンスや啓蒙主義といった時代は、人間の理性と科学に対する信頼を深め、社会の進歩に大きく貢献しました。
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進歩への確信
コンドルセは、人間精神は本質的に進歩し続けるものであると確信していました。彼は、教育の普及、貧困の克服、社会的不平等の解消などを通じて、人類はさらなる幸福と完成へと到達できると信じていました。彼は、科学技術の進歩がもたらす可能性についても言及し、未来の社会においては、病気や飢餓、戦争といった問題が解決され、人々はより豊かで平等な生活を送ることができると予測しました。
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影響と批判
「人間精神進歩史」は、啓蒙主義の理念を代表する書物として、後世に大きな影響を与えました。しかし、その楽観的な歴史観は、20世紀以降の世界大戦や全体主義の台頭などを経験した現代の視点からは、批判的に検討する必要があるという意見もあります。