コンドルセの人間精神進歩史のテクスト
コンドルセの思想的背景
コンドルセ（1743-1794）は、フランス啓蒙主義を代表する思想家の一人であり、数学者、哲学者、政治家として活躍しました。彼の思想は、理性と科学による人類の進歩への強い信念に貫かれています。これは、ニュートン力学の成功や百科全書派の活動に見られる、当時の進歩思想の影響を強く受けています。
「人間精神進歩史」の概要
コンドルセの主著である「人間精神進歩史」（Esquisse d’un tableau historique des progrès de l’esprit humain）は、1795年に出版されました。この書は、人類史を10段階に分け、それぞれの段階における人間精神の発展を、科学、芸術、政治、道徳などの側面から描き出す壮大な歴史哲学書です。
10段階の進歩
コンドルセは、人類史を以下の10段階に分けました。
1. 人類の幼年期
2. 牧畜の開始と最初の言語の発達
3. 農耕の開始と土地の私有の発生
4. ギリシアにおける哲学と芸術の発展
5. ローマ帝国の興隆と衰退
6. キリスト教の普及と中世の暗黒時代
7. ルネサンスと宗教改革
8. 科学革命と啓蒙主義
9. フランス革命
10. 未来への展望
コンドルセは、これらの段階を経て、人類は迷信や偏見から解放され、理性と科学に基づいたより良い社会を実現すると考えました。
進歩の要因
コンドルセは、人間精神の進歩を促す要因として、以下の点を挙げました。
* 理性の発達
* 教育の普及
* 科学技術の進歩
* 政治体制の改革
彼は、これらの要因が相互に作用し合いながら、人類をより良い未来へと導くと信じていました。
未来への展望
コンドルセは、未来の社会として、不平等や貧困が克服され、すべての人が平等な権利と機会を享受できる社会を構想しました。彼は、教育の普及によって人々の理性と道徳が向上し、戦争や犯罪のない平和な世界が実現すると楽観的に予測しました。
「人間精神進歩史」の影響
「人間精神進歩史」は、フランス革命後の混乱期に書かれ、進歩という希望を人々に与えました。この書は、その後の社会主義思想や歴史哲学に大きな影響を与え、今日でも重要な古典として読み継がれています。