コンドルセの人間精神進歩史に影響を与えた本
影響を与えた書物：百科全書、または科学・芸術・工芸の体系的辞典
コンドルセの『人間精神進歩史』に影響を与えた書物として、ドゥニ・ディドロとジャン・ル・ロン・ダランベールが編集した『百科全書、または科学・芸術・工芸の体系的辞典』（以下、『百科全書』）が挙げられます。『百科全書』は、18世紀フランス啓蒙主義を代表する巨大な知識体系であり、コンドルセ自身も執筆に参加していました。
人間精神の進歩という共通の理念
『百科全書』と『人間精神進歩史』は、ともに人間精神の進歩という共通の理念を基盤としています。『百科全書』は、当時のあらゆる知識を網羅的に記述することで、人々の理性と知識を啓蒙し、社会の進歩に貢献することを目指しました。
コンドルセもまた、『人間精神進歩史』において、歴史を理性と科学の進歩として捉え、人間の幸福と社会の完成へ向けた進歩を確信していました。彼は、『百科全書』の理念を引き継ぎ、歴史を通して人間精神がどのように進歩してきたのかを体系的に描き出すことで、未来への希望を提示しようとしました。
科学と知識の普及
『百科全書』は、科学や技術に関する情報を詳細に記述することで、それらを広く普及させようという意図を持っていました。図版を多く用いることで、専門知識を持たない人々にも理解しやすいように工夫されていたことも特徴です。
コンドルセもまた、『人間精神進歩史』において、科学と知識の普及が人間精神の進歩に不可欠であると説いています。彼は、教育の重要性を強調し、誰もが知識を手に入れられる社会の実現を訴えました。
批判精神と社会改革
『百科全書』は、当時の社会体制や宗教的な権威に対して批判的な立場をとっていました。既存の知識や権威に疑問を投げかけ、理性に基づいた社会改革を提唱していたのです。
コンドルセもまた、『人間精神進歩史』の中で、迷信や偏見を克服し、理性に基づいた社会を実現することの重要性を説いています。彼は、言論の自由や平等な社会の実現に向けて、積極的に行動を起こしました。
このように、『百科全書』は、人間精神の進歩、科学と知識の普及、批判精神と社会改革といった点において、『人間精神進歩史』に大きな影響を与えました。コンドルセは、『百科全書』の理念を継承し、発展させることで、理性と科学に基づいた進歩的な社会の実現を目指したのです。