## ケルゼンの純粋法学と時間
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純粋法学における時間の概念
ケルゼンは、彼の提唱する「純粋法学」において、法を他の社会現象から切り離し、独自の体系として捉えようとしました。この試みは、法の自律性を確保し、イデオロギー的な解釈から法学を解放することを目的としていました。
時間という概念は、ケルゼンの純粋法学において重要な役割を果たしています。彼は法を「規範」の体系と捉え、規範は「あるべき」という当為の命題として、時間の流れの中で成立し、効力を持ち、そして消滅していくものと考えたからです。
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動態的な法秩序と時間の関係
ケルゼンは、法秩序を静的なものではなく、動的なものとして捉えました。法秩序は、上位の規範から下位の規範へと、段階的に構成され、それぞれの規範は上位の規範によって正当化されます。これは「 Stufenbau 」と呼ばれる、ピラミッド型の構造を持っています。
この動的な法秩序において、時間は重要な要素となります。上位の規範が制定された時間と、下位の規範が制定された時間には、必然的に前後関係が生じます。そして、この時間的な前後関係は、規範の効力にも影響を与えます。例えば、ある法律が制定された後に、その法律と矛盾する内容の上位の法律が制定された場合、時間的に後の法律が有効となります。
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時間と法の効力
ケルゼンは、法の効力を、「有効性(Geltung)」と「実効性(Wirksamkeit)」という二つの側面から捉えました。有効性とは、規範が法秩序の中で正当な手続きを経て制定され、法的拘束力を持つ状態を指します。一方、実効性とは、規範が社会の中で実際に遵守されている状態を指します。
時間という要素は、法の有効性と実効性の両方に影響を与えます。例えば、ある法律が制定されたとしても、それが社会的に受け入れられず、人々に遵守されなければ、実効性を欠くことになります。また、時間の経過とともに、社会状況や人々の価値観が変化し、制定当初は実効性を持っていた法律が、実効性を失っていくこともあります。