## ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の入力と出力
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**入力**
ケインズの「雇用・利子・貨幣の一般理論」は、1930年代の世界恐慌という未曾有の経済危機を背景に、古典派経済学では説明できない長期にわたる大量失業という現象を分析し、有効需要の創出による政府の積極的な介入を主張した画期的な経済学説です。
この理論を理解するための重要な「入力」要素として、以下の点が挙げられます。
1. **有効需要の原理**: これは、財・サービスに対する総需要が生産量、ひいては雇用量を決定するという考え方です。古典派経済学では供給が自身の需要を創造すると考えられていましたが(セイの法則)、ケインズは需要が供給を決定すると主張しました。
2. **限界消費性向**: これは、所得が増加したときに消費が増加する割合を示すものです。ケインズは、人々が所得の全てを消費するわけではなく、一部を貯蓄に回すと考えました。限界消費性向が低いほど、所得増加による有効需要の増加は小さくなります。
3. **投資の不安定性**: ケインズは、投資が将来の収益に対する期待に大きく左右されると考えました。将来の収益に対する期待は不確実性が高く、変動しやすいものです。そのため、投資は不安定な要素となり、経済の波动を引き起こすと考えました。
4. **流動性選好**: 人々が資産を保有する際に、現金のようにすぐに決済に利用できる形態(流動性が高い)を好む傾向のことです。金利が低下すると、人々はより多くの現金を保有しようとします。
5. **乗数効果**: 政府支出や投資などの増加が、最終的な国民所得を当初の支出額よりも大きく増加させる効果のことです。これは、支出の増加が所得の増加をもたらし、その所得増加がさらなる消費を誘発するという循環が生じるためです。
これらの「入力」要素を組み合わせることで、ケインズは経済のメカニズムを分析し、独自の理論を構築しました。
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**出力**
ケインズの「一般理論」の主要な「出力」は、以下の3点に集約されます。
1. **失業の原因**: ケインズは、大量失業の原因は有効需要の不足にあると結論づけました。古典派経済学では、賃金が柔軟に調整されれば、労働市場は常に完全雇用状態にあるとされてきました。しかし、ケインズは現実には賃金の下方硬直性などが存在し、市場メカニズムが完全には機能しないと主張しました。
2. **政府の役割**: ケインズは、有効需要を創出するために政府が積極的に経済に介入する必要性を主張しました。具体的には、公共事業などへの支出拡大や減税などを通じて有効需要を喚起し、雇用を創出できるとしました。
3. **金融政策の限界**: ケインズは、金融政策は景気対策として有効な手段となり得るとしましたが、その効果には限界があると指摘しました。特に、不況時には金利がゼロに近づき、金融政策の効果が薄れる「流動性の罠」に陥る可能性を指摘しました。
これらの「出力」は、当時の経済学界に大きな衝撃を与え、その後のマクロ経済学、そして経済政策に多大な影響を与えることになりました。