グッドマンの世界制作の方法の対極
世界認識の基礎としての客観的実在:プラトンの「国家」におけるイデア論
ネルソン・グッドマンの「世界制作の方法」は、多様な世界観や解釈の妥当性を認め、客観的な「真の世界」という概念を否定する相対主義的な立場を取ります。これに対し、プラトンの「国家」で展開されるイデア論は、客観的で不変の真実が存在するという立場から、グッドマンとは対極的な世界認識の方法を示しています。
プラトンは、我々が感覚的に経験するこの世界は、真の実在である「イデア」の不完全な模倣に過ぎないと考えました。イデアとは、たとえば「正義」「美」「善」といった概念の純粋で完全な原型であり、時空を超越した永遠不変の存在です。
感覚を超えた認識:洞窟の比喩と哲学者の役割
プラトンは、「国家」第七巻で有名な「洞窟の比喩」を用いて、感覚的な経験の限界とイデアの認識の重要性を説いています。洞窟に閉じ込められた人々は、影絵しか見ることができず、それを現実と錯覚しています。しかし、真の哲学者だけが洞窟の外に出て、太陽の光に照らされたイデアの世界を認識することができます。
対照的な世界認識の方法:相対主義 vs. 客観主義
このように、グッドマンが複数の世界制作の方法を認め、それぞれの妥当性を認めるのに対し、プラトンはイデアという絶対的な基準を設けることで、客観的な真実に到達できると主張しました。グッドマンが芸術作品や科学理論など、人間による構成物を重視するのに対し、プラトンは感覚を超越したイデアの認識こそが真の知識であると考えました。
両者の対比は、世界をどのように認識するかという哲学的問いに対する、対照的な二つのアプローチを示しています。