グッドマンの世界制作の方法の原点
グッドマンの哲学的背景
ネルソン・グッドマン(1906-1998)は、アメリカの哲学者であり、記号論、芸術哲学、認識論、形而上学などの分野で多岐にわたる業績を残しました。彼の思想は、論理実証主義や分析哲学の影響を受けながらも、独自の視点を展開した点に特徴があります。特に、従来の哲学が言語分析に偏重してきたことを批判し、芸術、科学、道徳など、人間の認知活動全般を対象とする「認知の記号論」を提唱しました。
世界制作の概念の誕生
グッドマンの世界制作の概念は、彼の主著である『芸術の言語:記号論による美学』(1968年)の中で初めて明確に提示されました。この著作は、従来の美学が西洋美術中心主義や表象主義に陥っていたことを批判し、記号論に基づいた新しい美学の枠組みを提示することを目的としています。グッドマンは、芸術作品を「記号体系」とみなし、その制作と解釈のプロセスを分析することで、芸術の認知的機能を明らかにしようとしました。
世界制作における記号の役割
グッドマンは、世界は単一ではなく、人間の認知活動を通じて多様に構成されると考えました。そして、この世界構成において中心的な役割を果たすのが「記号」です。グッドマンは、絵画、彫刻、音楽、文学などの芸術作品だけでなく、科学理論や地図、図表なども記号体系とみなし、それらがそれぞれ独自の方法で世界を記述し、組織化していると主張しました。
「正しい」世界は存在しない
グッドマンは、世界制作の方法は無数に存在し、どの方法が「正しい」ということはないと考えました。彼にとって重要なのは、それぞれの記号体系がどのように世界を切り取り、組織化しているかを理解することでした。