## ギールケのドイツ団体法の原点
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ギールケの団体法理論とその背景
ギールケ(Otto Friedrich von Gierke, 1841-1921)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したドイツの法学者であり、その代表作である「ドイツ団体法論」(Das deutsche Genossenschaftsrecht)を通じて、独自の団体法理論を展開しました。彼の理論は、ローマ法以来の法人擬制説を批判し、団体の有機体的実在性を主張した点に大きな特徴があります。
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ギールケの団体法理論の源流:ゲルマン法における団体観
ギールケの団体法理論の源流を辿ると、ゲルマン法における独特の団体観に行き着きます。ゲルマン法においては、国家や社会は、個人からなる機械的な結合体としてではなく、それぞれが独自の生命と意志を持つ有機的な結合体として捉えられていました。家族、村落共同体、ギルドといった団体は、個人の集合体であると同時に、それ自体が独立した人格を有する実在として認識されていたのです。ギールケは、こうしたゲルマン法の伝統を深く研究し、その成果を自らの団体法理論に反映させました。
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歴史主義の影響:国家と社会の有機的な関連性への着目
ギールケの思想形成に大きな影響を与えたもう一つの要素として、19世紀ドイツ歴史学派の影響を挙げることができます。当時のドイツでは、サヴィニーに代表される歴史主義が隆盛を極めており、法は国民の精神生活から自然発生的に生み出される歴史的産物であると考えるのが主流でした。ギールケもまた歴史主義の影響を受け、国家と社会を歴史的発展の産物として捉え、両者の有機的な関連性を重視しました。彼は、国家のみが唯一の法的秩序の主体であるとする国家万能主義的な風潮に警鐘を鳴らし、国家と並んで社会集団にも独自の権利能力を認めるべきだと主張しました。
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ローマ法に対する批判:法人擬制説の克服
ギールケの団体法理論は、ローマ法以来支配的であった法人擬制説への批判として提起された側面も持ち合わせています。法人擬制説とは、国家のみが真の権利主体であり、法人とはあくまでも国家によって創設されたフィクションに過ぎないと考える立場です。ギールケは、この法人擬制説を、国家の権力を絶対視し、社会の自律性を軽視するものとして厳しく批判しました。彼は、団体は国家の創造物ではなく、社会生活の必然的な産物として自然発生的に形成される実在であると主張し、団体に独自の権利能力を認めるべきだと訴えかけました。