ギボンのローマ帝国衰亡史の思考の枠組み
ローマ帝国衰亡の要因
ギボンは、ローマ帝国の衰亡を複数の要因の複合的な作用の結果として捉えており、その要因を歴史的に分析しています。彼は単一の要因に還元することを避け、政治、軍事、経済、社会、文化、宗教といった多角的な視点から帝国の衰退過程を考察しています。
バルバロイの侵入とキリスト教の影響
ギボンは、ゲルマン民族など「バルバロイ」と称される異民族の侵入をローマ帝国衰退の重要な要因の一つとして挙げつつも、それを単なる軍事的な征服によるものとは考えていません。彼は、バルバロイの侵入が帝国の内部崩壊と密接に関係していたことを指摘し、帝国の衰退が彼らの侵入を許した側面があると分析しています。また、キリスト教の隆盛についても、帝国の伝統的な価値観や社会構造を弱体化させ、衰退を加速させた要因の一つとして捉えています。
ローマ人の美徳の喪失
ギボンは、ローマ帝国の繁栄を支えていた市民の civic virtue (市民としての美徳)の衰退を重視しています。共和制ローマの時代には、市民は公共心に富み、国家への奉仕を当然と考える気風がありました。しかし、帝国後期に入ると、奢侈と退廃が広まり、市民は私欲に走るようになり、それが帝国の衰退を招いたとギボンは考えています。
歴史の教訓
ギボンは、ローマ帝国の衰亡を単なる過去の出来事としてではなく、現代社会への教訓として捉えています。彼は、ローマ帝国が直面した問題、例えば、政治腐敗、社会の格差拡大、異民族との対立などは、現代社会にも通じる普遍的なものであると考えていました。そして、歴史から学び、同じ轍を踏まないようにすることが重要であると説いています。