## ギボンのローマ帝国衰亡史から学ぶ時代性
### ギボンの見たローマ帝国衰亡と18世紀の時代背景
エドワード・ギボンの著した『ローマ帝国衰亡史』は、1776年から全6巻が刊行されました。これは、単なる歴史書ではなく、著者の生きた18世紀の時代背景を色濃く反映した作品として捉えることができます。
### 啓蒙主義の光と影:理性と進歩への楽観と不安###
ギボンは、理性と科学の発展を重視した啓蒙主義の時代に生きました。彼は、ローマ帝国の繁栄を支えた共和制期の市民の徳や、合理的な法制度を高く評価し、その衰退を、キリスト教の普及による精神性の増長や、蛮族の侵入といった「非理性的」な要因に帰しています。
一方で、ギボンは、啓蒙主義が標榜する進歩という概念にも、影の部分を感じ取っていました。彼は、巨大化しすぎたローマ帝国が、官僚主義や奢侈によって腐敗していく様を描写することで、当時のイギリス社会における繁栄の陰に潜む、退廃への懸念を暗に示唆していたとも考えられます。
### 東方に対する複雑な視線:憧憬と軽蔑の狭間で###
ギボンは、ローマ帝国を滅亡させた要因の一つとして、東方的な専制主義の台頭を挙げました。彼は、ビザンツ帝国を「専制君主と従順な臣民」によって構成された、停滞した社会として描いています。
しかし、同時に彼は、東方の文化や思想にも深い関心を抱いていました。イスラム文化やビザンツ美術に対する彼の造詣の深さは、当時のヨーロッパ社会におけるオリエンタリズムの影響を窺わせます。
### ギボンの描く歴史:現代社会への警鐘###
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は、単なる過去の出来事の記録ではなく、現代社会に対する警鐘として読むことができます。彼は、理性と進歩を重視する一方で、その影に潜む危険性も同時に認識していました。彼の歴史観は、現代社会においても、我々が直面する様々な問題を考える上で、重要な示唆を与えてくれると言えるでしょう。