キルケゴールの死にいたる病の構成
第一部 絶望の概念の定義
第一部は、「絶望」の概念を定義することに焦点を当てています。キルケゴールは、まず絶望が「自己」と「自己でありたいもの」との間の不一致から生じることを説明します。自己とは、人間存在の根本的な真実であり、自己でありたいものとは、人間が理想とする姿や状態を指します。
この不一致は、自己に対する無知、自己への無関心、自己からの逃避、自己に対する反抗という四つの形態で現れます。それぞれは、絶望の段階と種類を表しており、自己と理想との間の距離の大きさによって区別されます。
第一部では、各形態における絶望の具体的な内容と、それがどのようにして人間の精神を蝕んでいくのかが詳細に分析されます。
第二部 絶望が罪であることの説明
第二部では、第一部で定義された「絶望」が、単なる精神状態ではなく「罪」であることが論じられます。キルケゴールは、キリスト教の教義に基づき、人間は神によって創造された存在であり、本来は神との関係性の中で自己を見出すように設計されていると説明します。
しかし、人間は自由意志によって神から離れ、自己の力だけで自己を定義しようとします。この自己絶対化が「罪」の本質であり、絶望の根源となります。
第二部では、絶望と罪の関係性、そしてそこから生じる人間の苦悩と救済の可能性について考察が深められます。