## キケロの老年について
老年期の苦悩に対する反論
「老年について」(羅: Cato Maior de Senectute)は、マルクス・トゥッリウス・キケロが紀元前44年、72歳のときに執筆した哲学対話篇です。作品は、老齢期における幸福の可能性を主張するキケロの試みであり、老齢期につきまとう一般的な苦悩に対して、雄弁な反駁を試みています。
対話の舞台と登場人物
作品の舞台は紀元前150年、ローマの政治家であり軍人であったマルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウスの邸宅に設定されています。登場人物は、カトー自身と、若きガイウス・ラエリウス・サピエンス、そしてスcipio Aemilianus(スキピオ・アエミリアヌス)という二人の若い貴族たちです。
老年期の四つの苦悩とキケロの反論
カトーは、老齢期に対する一般的な四つの苦悩、すなわち1) 活動的な人生からの引退、2) 肉体的衰退、3) 快楽への無関心、4) 死の恐怖、に焦点を当てて論じていきます。それぞれの苦悩に対して、カトーは以下のように反論します。
* **活動的な人生からの引退**: カトーは、老齢期は知的な追求や助言活動に専念する機会であると主張します。老人は豊富な経験と知識を蓄積しており、若い世代を導く上で重要な役割を果たすことができます。
* **肉体的衰退**: カトーは、肉体の衰えは精神的な成長によって補填できると主張します。老齢期は知恵と徳を培うための貴重な時間であり、肉体の衰退は必ずしも幸福の妨げにはなりません。
* **快楽への無関心**: カトーは、真の幸福は肉体的な快楽ではなく、精神的な満足から得られると主張します。老齢期は静穏と内省に適しており、真の幸福を追求する上で有利な時期であるとも言えます。
* **死の恐怖**: カトーは、死は自然なプロセスであり、恐れるべきものではないと主張します。死後については不確かですが、それはすべての者に共通の運命であり、老人は死を冷静に受け入れるべきであると説きます。
「老年について」が伝えるメッセージ
「老年について」は、老齢期に対する楽観的な見方を提示し、幸福で充実した老年期を送るための指針を提供しています。作品を通して、キケロは老齢期を人生の自然な段階として捉え、その独特の価値と可能性を強調しています。