キケロの義務についての対極
マキャベリの君主論
マキャベリの『君主論』は、16世紀初頭に書かれた政治論で、権力獲得と維持の方法を論じています。
『君主論』は、現実主義的な政治観に基づき、道徳や倫理よりも、権力維持のための効果的な手段を重視しています。
これは、ストア派哲学の影響を受けたキケロが『義務について』で説いた、道徳や正義を重視する立場とは対照的です。
君主論における倫理観
マキャベリは、『君主論』において、君主は国家の安定と繁栄のために、時には非情な決断を下さなければならないと主張しました。
彼は、伝統的な道徳観にとらわれず、目的のためには手段を選ばない、いわゆる「目的のための手段の正当化」を容認する立場を取っています。
例えば、君主は民衆を欺いたり、恐怖政治によって支配することが許されると考えました。
キケロとの対比
キケロは、『義務について』の中で、正義、知恵、勇気、節制といった美徳を重視し、これらが個人の幸福と社会の秩序に不可欠であると説きました。
彼は、政治家は常に道徳的な行動をとるべきであり、権力を私利私欲のために利用することを厳しく戒めました。
このように、『君主論』と『義務について』は、倫理観、政治観において全く異なる立場を表明しており、対極的な関係にあると言えます。