キケロの義務についてのメカニズム
義務の源泉:自然本性に従うこと
キケロは、義務の源泉を自然本性に見出します。人間を含む全ての存在は、自己保存や種の保存といった自然本性に根ざした衝動を持っています。そして、人間には理性という他の生物にはない特別な能力が与えられています。理性は、私たちに善悪を判断し、より高次の善を追求することを可能にします。
四つの徳:義務の具体的な内容
キケロは、義務の具体的な内容として、四つの主要な徳を提示します。
1. **知恵**: 物事の本質を見抜く能力であり、正しい判断の基礎となります。知恵は、経験や学習を通じて培われ、他の徳を正しく行使するために不可欠です。
2. **正義**: 各人にふさわしいものを与え、社会の秩序と調和を保つ徳です。正義は、公平さ、誠実さ、法の遵守などを含みます。
3. **勇気**: 困難に立ち向かう精神力であり、正しいと信じることを貫き通すために必要です。勇気は、肉体的な強さだけでなく、精神的な強さも含みます。
4. **節制**: 欲望や情熱を理性によって制御する徳であり、バランスのとれた行動を可能にします。節制は、過剰を避け、中庸を保つことを目指します。
義務の衝突:状況に応じた判断の必要性
キケロは、義務が常に明確に一義的に定まるわけではないことを認識しています。状況によっては、複数の義務が衝突し、どちらかを選択しなければならない場合があります。例えば、真実を語る義務と友人を守る義務が対立する場合などが考えられます。このような場合、キケロは、具体的な状況を考慮し、より大きな善、より重要な義務を判断する必要があると説きます。
社会的な存在としての人間:義務と共同体
キケロは、人間を本質的に社会的な存在と捉えます。私たちは、家族、友人、国家といった様々な共同体に属し、互いに協力し合って生きています。義務は、単に個人の利益や幸福のためだけのものではなく、これらの共同体の維持発展にも貢献するものでなければなりません。
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