## キケロの友情についてを深く理解するための背景知識
古代ローマにおける友情の概念
古代ローマにおいて、友情(アミキティア)は単なる個人的な感情を超えた、社会的な、そして政治的な重要性を持つものでした。ローマ社会はパトロネジウムと呼ばれる、相互扶助の関係を基礎としていました。パトロンと呼ばれる上位者はクライエンテスと呼ばれる下位者に対し、政治的な支援や経済的な援助を提供し、クライエンテスはパトロンに忠誠を誓い、選挙での支持や日々の業務における助力などを行いました。このパトロネジウムの関係は、しばしば友情という形で表現されました。
ストア派哲学と友情
キケロはストア派哲学に深く傾倒していました。ストア派は、理性に基づいた生き方と徳を重視し、感情に左右されないことを理想としました。しかし、ストア派は友情を、理性的な選択に基づく、徳のある人間同士の結びつきとして肯定的に捉えていました。真の友情は、相互の尊敬、信頼、善意に基づき、互いの徳を高め合うものであるとされました。
キケロの時代背景:共和政末期の混乱
キケロが活躍した紀元前1世紀は、ローマ共和政が末期的な混乱に陥っていた時代でした。マリウスとスッラの内乱、カエサルの台頭、ポンペイウスとの対立など、ローマは内戦と権力闘争に明け暮れていました。このような不安定な時代において、キケロは共和政の維持とモラルの回復を強く願い、政治家、雄弁家、そして哲学者として活躍しました。
『友情について』執筆の背景
キケロは紀元前44年に、親友であったアッティクスに宛てて『友情について』を執筆しました。この作品は、キケロがカエサル暗殺後、アントニウスの台頭に危機感を抱き、政治的に孤立していた時期に書かれたものです。キケロは、ガイウス・ラエリウス・サピエンスという人物を語り手に設定し、過去の偉人であるスキピオ・アフリカヌスとガイウス・ファンニウス・ストラボとの対話を再現する形式で、友情の本質や重要性について論じています。
キケロの人間関係:アッティクスとの友情
キケロは生涯を通じて、多くの友人や支援者、そして敵対者と関わりました。その中でも、アッティクスとの友情は特に深く、長年にわたって手紙を交換し、互いに信頼し合い、支え合いました。アッティクスは政治に関与せず、学問と芸術を愛する人物でしたが、キケロは彼に政治的な相談をし、助言を求め、また個人的な悩みを打ち明けました。アッティクスは常に冷静な判断力と温かい友情でキケロを支え、彼の心の支えとなりました。
キケロの著作における友情
キケロは『友情について』以外にも、多くの著作の中で友情について言及しています。例えば、『義務について』では、友情は公共の利益と調和するものであり、正義に反する友情は存在しないと述べています。『老年について』では、老年期における友情の慰めと重要性を強調しています。これらの著作を通して、キケロは友情を、人間にとって最も大切なものの一つとして、高く評価していたことがわかります。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。