## キケロの共和国についての表象
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理想的な国家像
キケロは、対話篇『国家論』の中で、理想的な国家像として、王政・貴族政・民衆政の三つの要素を調和させた混合政体を提示しています。彼は、それぞれの政体には長所と短所があると認識しており、単一の政体ではいずれ腐敗し、暴政に陥ると考えていました。
『国家論』の中では、ローマ建国初期から共和政期にかけてのローマの歴史が、この混合政体の成功例として挙げられています。執政官は王政、元老院は貴族政、民会は民衆政の要素をそれぞれ体現しており、互いに抑制し合いながら均衡を保つことで、長期にわたる安定と繁栄を実現したとされています。
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ローマ共和政への評価
キケロは、自らの生きた時代よりも前の、共和政初期のローマを理想的な時代と見なしていました。当時のローマは、各階層が共通の利益のために協力し、質実剛健さを重んじる気風があったと考えていたためです。
しかし、キケロが生きていた時代には、共和政はすでに大きく変質していました。内乱や政治腐敗が頻発し、かつての理想は失われつつありました。キケロはこのような状況を憂い、自らの政治活動や著作を通じて、共和政の再建を目指しました。