## キケロの「老年について」の思考の枠組み
1. 老年に対する一般的な非難への反駁
キケロは、対話篇の形式をとった「老年について」において、語り手であるカトーを通して、老年に向けられる一般的な非難に体系的に反駁していきます。
具体的には、彼が取り上げる非難は以下の四つです。
* **活動できないこと:** 老年になると、肉体的な衰えによって、若い頃のように活動的に過ごせなくなるという非難。
* **人生への興味の減退:** 感覚の衰えや、死への意識の高まりによって、人生における様々な喜びや興味を失ってしまうという非難。
* **快楽の欠如:** 肉体的快楽をはじめ、多くの快楽を享受することが難しくなるという非難。
* **死への接近:** 死が間近に迫っているという不安や恐怖に苛まれるという非難。
カトーは、これらの非難に対して、老年期特有の魅力や可能性を論理的に提示することで、反駁を試みます。
2. 老年期における精神の充実
カトーは、老年期には、長年の経験によって培われた知恵や判断力、そして深い洞察力が備わっていることを強調します。
肉体的能力は衰えても、精神的な能力はむしろ成長し、深みを増していくと主張します。
また、老年期には、時間的な余裕が生まれることで、これまでの人生を振り返り、内省を深める機会が得られると述べています。
これは、精神的な成長や成熟を促し、より高次な喜びや満足感をもたらすとされます。
3. 魂の不死と死の超越
カトーは、プラトンの哲学に影響を受け、魂の不死を信じています。
肉体は死を迎えても、魂は永遠に存在し続けると主張し、死を恐れる必要はないと説きます。
彼は、死後の世界において、真の幸福と完璧な知性が実現されると信じ、老年期を死後の世界への準備期間として捉えます。
つまり、老年期は、死への恐怖や不安に苛まれる時期ではなく、むしろ魂の解放と永遠の生命への期待感に満ちた時期として描かれます。
4. 徳と知恵に基づいた老年期の過ごし方
カトーは、老年期を充実させるためには、徳と知恵を追求することが重要であると説きます。
具体的には、過去の偉人たちの生き方を模範とすること、農業などの穏やかな活動に従事すること、そして友人や家族との交流を楽しむことを推奨しています。
彼は、これらの活動を通して、精神的な満足感や心の平静を得ることができ、結果として、幸福な老年期を送ることができると主張します。
以上が、「老年について」におけるキケロの思考の枠組みです。
彼は、老年に対する一般的なイメージを覆し、知性と徳を追求することで、老年期も豊かな人生の etapa となり得ることを力説しています。