## キケロの「共和国について」の秘密
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失われた対話篇
「国家論」とも呼ばれる「共和国について」は、古代ローマの哲学者であり政治家でもあったマルクス・トゥッリウス・キケロによって紀元前54年から紀元前51年にかけて執筆された対話篇です。プラトンの「国家」の影響を強く受けており、理想的な国家の形態や正義、法、市民の義務などについて論じています。
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断片的な形でしか現存しない
「共和国について」は、長い間失われたと考えられていましたが、4世紀に発見された写本によって部分的に現代に蘇りました。しかしながら、現存する部分は全体の約3分の1に過ぎず、大部分は依然として失われたままです。
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発見の経緯
1819年、バチカン図書館の司書アンジェロ・マイは、4世紀の写本の中に「共和国について」の一部が含まれていることを発見しました。この写本は、他のテキストを上書きするために羊皮紙が再利用されたパリンプセストであり、「共和国について」のテキストは、その下に隠されていました。
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「スキピオの夢」
現存する「共和国について」の中で最も有名な部分は、「スキピオの夢」と呼ばれる第6巻の最後の一部です。この部分では、ローマの将軍スキピオ・アエミリアヌスが、亡き養父スキピオ・アフリカヌスから、天体の運行や魂の不滅性、国家への奉仕の重要性などについて教えられる様子が描かれています。
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「共和国について」の内容
「共和国について」は、6日間にわたる対話という形式で書かれており、各日は異なるテーマが議論されます。現存する部分からは、正義、法、国家の起源、異なる政治体制、理想的な政治家像など、多岐にわたるテーマが扱われていることがわかります。
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失われた部分
「共和国について」の大部分は失われたままですが、古代の文献や引用などから、その内容についてある程度の推測が可能です。例えば、失われた部分には、ローマ史における重要な出来事や人物についての議論や、キケロ自身の政治思想がより詳しく展開されていたと考えられています。
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現代における影響
「共和国について」は、古代ローマの政治思想を理解する上で重要な文献であり、ルネサンス以降、ヨーロッパの政治思想に大きな影響を与えてきました。特に、「混合政体」の概念や、市民の義務と国家への奉仕の重要性などは、後の時代の思想家たちに大きな影響を与えました。