## ガルブレイスの不確実性の時代と人間
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不確実性の時代
ハーバード大学の経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは、1977年に出版した著書「不確実性の時代」の中で、現代社会が直面する大きな不確実性について論じました。彼は、第二次世界大戦後の経済成長と技術革新によって、世界はかつてないほど豊かになった一方で、同時に予測不可能な時代に入ったと指摘しました。
ガルブレイスは、この不確実性の要因として、以下の点を挙げました。
* **巨大化する企業の影響力:** 大企業は、市場メカニズムを超えた影響力を持つようになり、経済や社会全体に大きな影響を与える存在となりました。その行動や意思決定は、しばしば予測困難で、社会に大きな不確実性をもたらします。
* **技術革新の加速:** 技術革新は、生活水準の向上や新たな産業の創出など、多くの恩恵をもたらす一方で、雇用の喪失や環境問題など、予測不可能な結果をもたらす可能性も孕んでいます。
* **国際関係の複雑化:** 冷戦の終結後、世界はより多極化し、国際関係は複雑さを増しています。国家間の相互依存関係が深まる一方で、地域紛争やテロリズムなど、予測不能な事態が発生するリスクも高まっています。
* **資源の枯渇と環境問題:** 地球温暖化や資源の枯渇など、地球規模の課題は、人類の将来にとって深刻な脅威となっています。これらの問題は、複雑に絡み合っており、その解決策を見出すことは容易ではありません。
これらの要因が相互に作用し合うことで、現代社会は複雑化し、不確実性を増大させているとガルブレイスは主張しました。
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人間と不確実性
ガルブレイスは、「不確実性の時代」において、人間は従来の思考様式や行動様式を見直す必要に迫られていると指摘しました。予測可能性や安定性が低い状況下では、過去の経験や知識は必ずしも役に立つとは限りません。
彼は、不確実性に対処するために、以下の能力が重要になると述べました。
* **柔軟性と適応力:** 変化の激しい時代には、状況に合わせて柔軟に対応できる能力が不可欠です。過去の成功体験に固執することなく、常に新しい情報や知識を取り入れ、変化を受け入れることが重要です。
* **批判的思考力:** 情報過多の現代社会において、情報を取捨選択し、その信憑性や妥当性を判断する能力はますます重要になっています。問題の本質を見抜き、多角的な視点から物事を考えることが求められます。
* **協調性とコミュニケーション能力:** 複雑な問題を解決するためには、多様な人々と協力し、共通の目標に向かって進んでいくことが必要です。そのためには、自分の意見を明確に伝え、相手の意見に耳を傾けるコミュニケーション能力が重要になります。
ガルブレイスは、不確実性の時代は、人間にとって試練の時代であると同時に、新たな可能性を秘めた時代でもあると述べています。変化を恐れず、積極的に行動することで、より良い未来を創造することができると彼は信じていました。