## カーライルのフランス革命史の力
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生きた歴史画としての力
カーライルの『フランス革命史』はその刊行以来、歴史書というよりは文学作品として評価されてきました。歴史的事実の正確さよりも、むしろその**劇的表現**と**鮮烈な描写**によって、読者はフランス革命の動乱の渦中に巻き込まれるような体験を得ます。
カーライルは、膨大な資料を渉猟し、革命の目撃者たちの証言を丹念に拾い集めることで、歴史という舞台に息吹を吹き込みました。登場人物たちの**生き生きとした肖像**、熱狂と恐怖に満ちた**パリの街の描写**、バスティーユ襲撃や国王処刑といった**歴史的事件の迫真性**は、読者に深い没入感を与えます。
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英雄崇拝と歴史の必然性
『フランス革命史』の特徴の一つに、**英雄崇拝**ともいえる歴史観が挙げられます。カーライルは、民衆のエネルギーを解放し、歴史を動かすのは、英雄的な指導者であると信じていました。
彼は、革命初期の指導者であったミラボーを高く評価し、そのカリスマ性と指導力によって革命が前進したと主張します。一方で、ロベスピエールを始めとするジャコバン派の指導者たちについては、恐怖政治による独裁を敷いたとして批判的に描いています。
このようにカーライルは、歴史を**英雄たちの織りなすドラマ**として捉え、その成功と失敗を通して、歴史の必然性と人間の偉大さと愚かさを浮かび上がらせようとしたのです。
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文学的な文体と独自の表現
『フランス革命史』の力を語る上で、その**文学的な文体**は欠かせません。カーライルは、歴史書としては異例なほどに、比喩や擬人化、反復などの修辞技法を駆使し、独特のリズムと力強さを備えた文体を確立しました。
彼の文章は、当時の口語調を交えつつも格調高く、読者を圧倒するような迫力を持っています。また、フランス語の単語やフレーズを随所に散りばめることで、臨場感とリアリティを高めていることも特徴です。
このような**独自の文体**によって、カーライルは歴史的事実を単に羅列するのではなく、読者の心に直接訴えかけるような力強い物語として描き出すことに成功したのです。