## カーの歴史とは何か の批評
エドワード・H・カーの主張について
エドワード・H・カーの『歴史とは何か』(What is History?)は、歴史学の性質について考察した古典的な著作として、多くの歴史家や歴史学徒に影響を与えてきました。しかし、その主張は必ずしも歴史学界全体に受け入れられているわけではなく、出版以来、様々な批判が寄せられています。
事実の解釈に対する視点について
カーは本書で、歴史家は過去の事実をありのままに認識することはできず、自らの視点や解釈を通して歴史を構築すると主張しています。彼は、歴史家の持つ背景や思想、置かれている社会状況などが、歴史の解釈に影響を与えると指摘し、完全に客観的な歴史叙述は不可能だと結論付けます。
客観性と相対主義のバランスについて
この主張は、歴史における客観性と主観性の問題、さらには歴史的相対主義の問題を提起するものであり、多くの議論を巻き起こしました。一部の批判者は、カーの主張が過度に相対主義に傾倒しており、歴史における客観的な真実の追求を軽視していると指摘しています。
歴史家の役割についての考察
一方で、カーは歴史家の主観性を認めた上で、歴史家には過去の事実を解釈し、現在に意味を見出す役割があると主張しています。彼は、歴史家は過去の出来事と現在の出来事との関連性を明らかにすることで、現代社会に対する理解を深めることができると考えていました。
歴史の進歩に対する見解
さらに、カーは歴史における進歩の概念についても論じています。彼は、歴史は単なる過去の出来事の羅列ではなく、人類の進歩の過程として理解されるべきだと主張します。