## カントの人倫の形而上学・法論の周辺
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刊行と構成
『人倫の形而上学』は、カントが1797年に出版した道徳哲学の著作です。原題は *Die Metaphysik der Sitten* で、日本語では「 Sittenlehre 」を「倫理学」と訳すことが多いですが、本書のタイトルには「倫理学」ではなく「人倫の形而上学」が用いられています。
本書は、大きく分けて以下の二部構成となっています。
* 第一部 法論の権利lehre vom Recht
* 第二部 徳論の権利lehre der Tugend
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位置づけ
カントは、1781年に出版した『純粋理性批判』において、人間の認識能力の構造とその限界を明らかにしようとしました。そして、人間の認識能力が及ぶのは現象界のみであり、物自体(Ding an sich)は認識できないと結論付けました。
しかし、カントは同時に、人間には自由と道徳という理念が不可欠であるとも考えていました。そこで、1785年の『道徳形而上学の基礎づけ』と1788年の『実践理性批判』において、道徳の基礎づけを純粋理性ではなく、実践理性に求めようとしました。
『人倫の形而上学』は、『道徳形而上学の基礎づけ』と『実践理性批判』で展開されたカントの道徳哲学を、より具体的な問題に適用した著作と位置づけられます。
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内容
『人倫の形而上学』は、法と道徳という二つの領域を扱っています。
第一部「法論」では、法とは何か、どのような法が正当な法なのかという問題を扱っています。カントは、法を「各人の自由が他のすべての者の自由と両立しうるような外的実践的行為の総体」と定義し、個人の自由を相互に調整するための制度として捉えています。
第二部「徳論」では、道徳とは何か、どのような行為が道徳的に善い行為なのかという問題を扱っています。カントは、道徳法則を「汝の意志の máxima が、常に同時に普遍的な立法の原理となりうるようなものとして行為せよ」という定言命法として定式化し、人間の行為の根底にある意志の普遍性を重視しました。
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影響
『人倫の形而上学』は、カントの道徳哲学の集大成とみなされており、その後の道徳哲学、法哲学、政治哲学に大きな影響を与えました。特に、法と道徳を明確に区別し、法を個人の自由を保障するための制度として捉えた点は、近代法思想に大きな影響を与えました。また、定言命法の概念は、義務論的倫理学の基礎となる重要な概念として、現代の倫理学においても議論の対象となっています。