## カルヴィーノの見えない都市の技法
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構造
『見えない都市』は、マルコ・ポーロとフビライ・ハーンの対話を枠組みとし、ポーロが訪れたとされる架空の都市の記述が、計55編挿入されるという入れ子構造を取っています。 都市の記述は、9つのテーマ(記憶、欲望、記号、薄い都市、交易都市、目、名前、死者、空)に分類され、それぞれが11の章に均等に配置されています。
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語り口
物語は、一人称視点で語られます。語りの主体は、都市を訪れた旅人であるマルコ・ポーロです。彼は、目にした都市の様子を、時に詩的に、時に幻想的に、時に写実的に描写します。 しかし、ポーロの語りは、客観的な記述にとどまりません。彼は、都市の姿を通して、人間の欲望や記憶、存在の不確かさといった普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
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メタファー
都市は、具体的な描写を通して、抽象的な概念を表現するメタファーとして機能します。 例えば、「都市と記憶」の章に登場する都市は、人間の記憶の不確かさや、過去への郷愁を象徴しています。 また、「都市と欲望」の章の都市は、人間の欲望の無限さと、それがもたらす虚無を描き出します。
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断片性
都市の記述は、それぞれが独立した断片として提示されます。 物語には、明確な時間軸や因果関係は存在せず、読者は、断片的な情報を自ら繋ぎ合わせ、作品世界を構築していくことを求められます。 この断片的な構成は、都市の多様性や、人間の認識の不完全さを象徴しているとも解釈できます。