カルヴィーノの見えない都市の光と影
光
「見えない都市」では、マルコ・ポーロがフビライ・ハーンに様々な都市の物語を語る形式をとっており、その都市はどれも架空のもので、特定の名前も持たない場合が多いです。しかし、どの都市にも共通して言えるのは、光と影が重要な要素として描かれている点です。
例えば、「都市とその記憶」の章に登場する都市は、過去の栄光や悲しみが建築物や人々の記憶に刻み込まれています。ここでは、過去の光が現在の都市に影を落とすように、時間軸を超えた光と影の関係性が描かれています。
また、「都市とその欲望」の章では、欲望が都市を形作り、発展させる原動力として描かれます。欲望は人々に活力を与え、都市を輝かせる光として機能する一方で、過剰な欲望は都市を堕落させ、影を落とす存在にもなり得ます。
影
「見えない都市」には、光と同様に影が重要なモチーフとして描かれています。
「都市とその記号」の章では、都市は複雑な記号体系によって成り立っており、その解釈は人によって異なることが示唆されます。ここでは、都市の真の姿は影に隠れており、容易に理解することはできないということが示されています。
「都市とその交換」の章では、貿易や交流を通して都市は繁栄する一方で、人々の間の関係は希薄になっていく様子が描かれます。都市の繁栄は、人々の心のつながりの喪失という影の部分を生み出しているとも言えます。