## カルヴァンのキリスト教綱要の対極
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エラスムスの「自由意志論」
「キリスト教綱要」が予定説を強く主張する一方、エラスムスの「自由意志論」(De libero arbitrio diatribe sive collatio) は人間の自由意志を擁護し、救済における人間の能動的な役割を強調しています。この著作は1524年にルターの「奴隷意志論」に対する反論として書かれ、宗教改革における重要な論点である自由意志と予定説の対立を鮮明にするものでした。
エラスムスは、人間は神の恩寵なしに善を行うことはできないものの、神の助けを借りて自由に善を選び、救済に協力することができると主張しました。彼は聖書のさまざまな箇所を引用し、人間の選択と責任を強調しました。
「自由意志論」はルター派から激しい批判を受け、宗教改革における論争を激化させました。しかし、人間の自由と尊厳を擁護するこの著作は、その後の思想史にも大きな影響を与え続けました。