カルヴァンのキリスト教綱要のテクスト
キリスト教綱要の内容
ジャン・カルヴァンによって執筆された『キリスト教綱要』(羅: Institutio Christianae Religionis)は、1536年に初版が出版され、その後、1559年に最終版となる第5版が出版されました。この書物は、宗教改革期におけるプロテスタント神学の重要な著作とされ、聖書解釈、神学、教会論、政治思想など幅広いテーマを網羅しています。
構成と主要テーマ
『キリスト教綱要』は、全4巻80章から構成され、それぞれが創造からキリストの再臨までのキリスト教信仰の全体系を体系的に解説しています。主なテーマとしては、以下の点が挙げられます。
* 神の認識と啓示：カルヴァンは、人間は生まれながらにして神を認識する能力を持っているが、罪によってその能力が損なわれていると論じます。そして、聖書こそが神からの真の啓示であり、神の認識への唯一の道標であると主張します。
* 予定説：カルヴァンは、人間の救済は神の絶対的な意志によってあらかじめ定められているという予定説を強く主張しました。これは、人間の自由意志よりも神の主権を強調するカルヴァン主義神学の中心的な教理となりました。
* 教会論：カルヴァンは、目に見える教会と目に見えない教会を区別し、真の教会はキリストを頭とする信仰者たちの共同体であるとしました。また、教会の統治形態として、長老主義を支持し、聖職者と信徒による教会運営を提唱しました。
* 聖礼典論：カルヴァンは、聖礼典は神の恵みを外的に表示し、保証するものであるとしました。そして、カトリック教会で認められていた7つの聖礼典のうち、洗礼と聖餐式の二つのみを真の聖礼典として認めました。
* 政治思想：カルヴァンは、国家権力は神の秩序の一部であり、統治者は神の代理人として正義と秩序を維持する義務があるとしました。ただし、統治者が暴政を敷く場合は、抵抗する権利も認められるという抵抗権の思想も示しました。
影響と評価
『キリスト教綱要』は、宗教改革期において大きな影響力を持ち、プロテスタント神学、特にカルヴァン主義神学の基礎を築きました。また、その影響は神学にとどまらず、政治、社会、文化など幅広い分野に及び、ヨーロッパ社会に大きな変革をもたらしました。今日においても、『キリスト教綱要』は、キリスト教思想の古典として、多くの神学者や信徒によって読み継がれています。