## カミュのペストの世界
舞台
物語の舞台はアルジェリアにあるオランという都市です。1940年代、第二次世界大戦中にこの街を襲ったペストの流行が描かれています。オランは物語の重要な要素であり、閉鎖的な空間、日常的な風景、地中海の強烈な日差しなどが、ペスト禍の恐怖と対比となって、登場人物たちの心理状態を浮き彫りにします。
登場人物
* **ベルナール・リエ医師:** 物語の語り手。ペスト流行の初期から陣頭指揮を執り、献身的に患者の治療にあたります。
* **ジャン・タル―:** リエ医師の友人である作家。日記を通じてペスト禍の記録を残そうとします。
* **ジョゼフ・グラン:** 市役所で働く真面目な小役人。文才に恵まれながらも、完璧な文章を求めてなかなか筆が進みません。
* **レイモン・ランベール:** ジャーナリスト。当初はペスト禍から逃れようとしていましたが、後に留まって衛生隊に参加します。
* **パヌルー神父:** 街で尊敬を集める司祭。ペストを神の罰と捉え、人々に悔い改めるよう説きます。
* **コタール:** 謎の多い男。ペストの流行を喜んでいるかのような素振りを見せます。
ペストの象徴する意味
ペストは単なる病気ではなく、悪や不条理、死といった人間の存在に付きまとう根源的な恐怖を象徴しています。カミュはペストという極限状況を描き出すことによって、人間の尊厳、自由、愛、そして連帯といった普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
人間の反応
ペストの流行という未曾有の危機に直面し、登場人物たちはそれぞれの立場や価値観に応じて様々な反応を見せます。リエ医師のように献身的に人々を助けようとする者もいれば、ランベールのように当初は自分のことしか考えられない者、コタールのように異常な行動を取る者もいます。
抵抗と連帯
カミュは絶望的な状況下においても、人間は抵抗することをやめてはならないと訴えます。ペストとの闘いは、不条理な世界に対する人間の抵抗の象徴であり、リエ医師やタル―をはじめとする人々は、連帯することによって苦難を乗り越えようとします。