## カポーティの冷血の感性
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客観性と主観性の交錯
「冷血」において、カポーティはジャーナリスティックな客観性と文学的な主観性を巧みに融合させています。彼は綿密な取材に基づき、事件の事実関係、犯人や被害者の背景、裁判の様子などを克明に描写します。その筆致は冷静沈着で、まるでドキュメンタリーフィルムを見ているかのような錯覚を覚えるほどです。
しかし、カポーティはただ事実を羅列するだけに留まりません。彼は登場人物たちの心情や葛藤を、彼らの視点から丁寧に描き出します。特に、犯人のペリー・スミスに対しては深い共感を抱いていたとされ、彼の生い立ちや内面に肉薄することで、単なる「悪」として切り捨てることのできない人間性を浮き彫りにしています。
この客観性と主観性の交錯は、「冷血」の大きな特徴の一つと言えるでしょう。読者は、事件の生々しい現実を突きつけられる一方で、登場人物たちの心の闇に触れることで、人間の深淵を覗き込むような読書体験を得ることになります。