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カポーティの冷血の対称性

カポーティの冷血の対称性

対称性を示唆する要素

「冷血」において、カポーティは様々な対称的な構造を用いて、クルー家とクラッター家の共通点と対比点を浮き彫りにしています。

まず、両家の構成員の人数が同じであることが挙げられます。 両家ともに両親と子供が二人ずつおり、一見ごく普通の家庭のように見えます。 しかし、カポーティは両家の日常生活や価値観を対比的に描くことで、一見似ているように見える二つの家族の決定的な違いを際立たせています。

さらに、物語の構成にも対称性が見られます。 前半はクルー家とクラッター家の日常生活が交互に描かれ、後半は事件後の捜査と犯人逮捕、そして裁判へと展開していきます。 前半では、質素ながらも幸せな日々を送るクラッター家と、社会から疎外され、金銭欲に駆られたクルー家の姿が対照的に描かれます。 そして後半では、犯行の動機や犯人たちの心理状態が詳細に描写されることで、読者は事件の真相に迫っていくことになります。

登場人物の対比構造

カポーティは、登場人物たちの性格や境遇を対比させることで、善と悪、光と影といったテーマを浮かび上がらせています。 特に、クルー家のペリーとクラッター家のナンシーは対照的な人物として描かれています。

ナンシーは、明るく社交的な性格で、周囲の人々から愛される存在です。 一方、ペリーは複雑な生い立ちを持ち、孤独と劣等感にさいなまれています。 ナンシーはクラッター家の中心人物であり、彼女の死は家族の崩壊を象徴する出来事となります。 一方、ペリーはクルー家の犯罪を主導する役割を担い、彼自身の内面の闇が事件へと繋がっていきます。

空間描写における対称性

「冷血」では、カンザスの広大な風景と、閉鎖的な空間が対比的に描かれています。 クラッター家は広大な自然の中に佇む農家で、開放的な空間として描かれています。 一方、クルー家は社会から隔絶された場所に身を隠し、犯行後も逃亡生活を送ります。 このような空間描写の違いは、両家の生き方や価値観の違いを象徴していると言えるでしょう。

また、物語の舞台となるホルカムという田舎町も、一見平和に見えながら、その裏側に潜む闇や暴力性を象徴する空間として描かれています。

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