オースターのレヴァイアサンを面白く読む方法
プロローグを読む
レヴァイアサンは、語り手である作家、ピーター・スティルマンが、古い友人であるベンジャミン・サックスの奇妙な死と、その死に至るまでの出来事について語るという構成を取っています。プロローグでは、サックスが爆死したという衝撃的な事実が提示されます。しかも、それは事故ではなく、自作自演のテロ行為でした。一体なぜ彼はそんなことをしたのか?という疑問が、読者を物語の世界へと引き込みます。
語り手のピーター・スティルマンに注目する
サックスの不可解な行動を解き明かすべく、スティルマンは彼の足跡を辿り始めます。読者は、スティルマンの視点を通して物語を追うことになるため、彼の性格や思考に注意を払うことが重要です。スティルマンは冷静で知的な人物ですが、彼自身の偏見や思い込みに囚われている部分もあります。彼の視点を通して語られるサックス像は、本当に真実なのでしょうか?読者自身の目で、サックスという人物を再構築していくことが、この小説を読む上での醍醐味の一つと言えるでしょう。
サックスの残した断片を読み解く
小説は、スティルマンの回想と、サックスの日記や手紙、関係者の証言といった資料が交互に挿入される形で進んでいきます。サックスは生前、作家、活動家、爆弾魔という全く異なる顔を持っていました。彼の残した言葉や行動は、しばしば矛盾し、読者を混乱させます。しかし、その断片の一つ一つが、パズルのピースのように、彼の真実に近づいていくための重要な手がかりとなります。読者は、まるで探偵になったかのように、それらの断片を繋ぎ合わせ、サックスという人物像を組み立てていくことになるのです。
オースター特有のメタフィクションを楽しむ
ポール・オースターは、メタフィクションと呼ばれる手法を好んで用いる作家として知られています。レヴァイアサンでも、作中作が登場したり、現実と虚構の境界線が曖昧になったりするなど、メタフィクション的な要素が随所に見られます。このような仕掛けは、物語に複雑さと深みを与え、読者に「小説を読む」ということ自体を改めて意識させる効果があります。難解に感じる部分もあるかもしれませんが、オースターの遊び心に身を委ねてみるのも良いでしょう。
アメリカの社会問題について考える
レヴァイアサンは、サスペンスフルな展開や魅力的な登場人物だけでなく、アメリカの社会問題についても鋭く問いかけています。サックスの爆弾テロは、言論の自由、政治的な暴力、個人の責任といった問題を提起します。また、小説の背景には、ベトナム戦争の影が色濃く漂っています。これらのテーマについて考えながら読むことで、物語はより深く、多層的な意味を持って迫ってくるでしょう。