オーウェルのビルマの日々 の構成
第一部
「オーウェルのビルマの日々」は、明確な章立てのない三部構成となっています。 第一部は、主人公のジョン・フローリーの視点を通して、ビルマ社会におけるイギリス帝国主義の現実、そして植民地支配の矛盾や葛藤が描かれます。
物語は、舞台となるビルマの陰鬱な雰囲気、そしてフローリーを取り巻く人種差別的な白人社会の描写から始まります。 読者は、フローリーが置かれた疎外感や、帝国主義への嫌悪感、そしてビルマ人への共感にも似た複雑な感情を抱く様子を、彼の視点を通して追体験していきます。
この部分は、フローリーの日常的な出来事や、彼と周囲の人々との関係を通して、ビルマ社会の複雑な人間模様を浮き彫りにしていきます。 特に、フローリーと漂泊のユダヤ人、エリザベスとの出会いと別れは、植民地社会における人間の孤独や、アイデンティティの模索といった普遍的なテーマを象徴的に描き出しています。
第二部
第二部では、フローリーが北部の上ビルマへ転勤となり、物語は新たな展開を見せます。 静かな田舎町での生活は、彼に束の間の安らぎと、自然との触れ合いをもたらします。 しかし、その静寂は、巨大な象の一件によって破られます。
狂暴化した象が町に迷い込み、ビルマ人を殺害するという事件は、フローリーの心に大きな葛藤を引き起こします。 彼は、帝国主義の象徴として象を射殺することを決意しますが、その決断は、彼自身の倫理観や、白人とビルマ人の間にある見えない壁に直面させることになります。
象の射殺シーンは、物語全体の中でも重要な意味を持ちます。 それは、単なる動物の射殺ではなく、植民地支配の矛盾と、その中で生きる人間の苦悩を象徴する出来事として描かれているからです。
第三部
第三部では、象の射殺事件後、フローリーの孤立感がさらに深まります。彼は周囲の白人社会から疎外され、ビルマ人社会からも距離を置かれたまま、やがてビルマを去ることを決意します。
物語の終盤は、フローリーがビルマを離れるまでの日々を描写しながら、帝国主義の終焉と、植民地社会の将来に対する漠然とした不安を感じさせます。 フローリーの去っていく後ろ姿は、ビルマに残された問題や、植民地支配がもたらした傷跡の深さを暗示しています。
全体を通して、「オーウェルのビルマの日々」は、明確な起承転結を持つ物語というよりは、むしろ、ある時代の断片を切り取ったかのような構成となっています。 そして、その断片的な描写を通して、読者は植民地支配の現実と、そこに生きる人々の複雑な心情を、よりリアルに感じ取ることができるようになっています。