オレムの看護の一般理論の対極

ナイチンゲールの環境論は、看護における環境の重要性を説いた理論です。 1859年に出版された著書「看護覚え書」の中で、ナイチンゲールは、新鮮な空気、清潔な水、適切な光、静けさ、適切な食事といった環境要因が患者の回復に大きく影響を与えることを主張しました。

彼女の理論は、当時の病院の劣悪な衛生状態に対する批判から生まれました。当時の病院は、換気が悪く、不衛生で、感染症の温床となっていました。ナイチンゲールは、このような環境が患者の回復を阻害し、死亡率を高めていると確信していました。

ナイチンゲールの環境論は、看護における患者の環境管理の重要性を明確化し、近代看護の礎となりました。彼女の提唱した清潔な環境の保持、換気の徹底、適切な食事の提供といった看護実践は、現代の病院でも当然のこととして受け継がれています。

オレムの自己ケア欠損理論は、看護の焦点を「環境」ではなく「個人」の自己ケア能力に当てています。オレムは、人は本来、自分の健康を維持・回復するために必要なケアを自ら行う能力（自己ケア能力）を持っていると考えました。

看護は、病気、障害、その他の要因によって自己ケア能力が低下した人が、その能力を最大限に発揮できるよう支援することであると定義しました。

一方、ナイチンゲールの環境論は、看護師が患者を取り巻く環境を整備することで、患者の回復を促進することを重視しています。つまり、オレムの理論が「個人の能力」に着目しているのに対し、ナイチンゲールの理論は「環境の調整」に重点を置いているという点で、対照的な考え方だと言えるでしょう。