## オルテガの大衆の反逆の評価
肯定的な評価
* **大衆社会の到来と没落を予見した先見性**: 本書は1930年に刊行されましたが、当時すでに台頭しつつあった大衆社会の危険性を鋭く指摘しており、その後の社会状況を正確に予見していたと評価されています。特に、専門知識や教養を持たない大衆が社会の主導権を握ることによる弊害、大衆の同調圧力による社会の停滞、そして大衆迎合主義的な政治の蔓延といった問題点は、現代社会においても依然として重要な論点となっています。
* **教養主義の重要性を再認識させた**: オルテガは、専門知識や教養、そして批判的な思考力を備えた「少数のエリート」が社会を導くべきだと主張しました。この主張は、一部から「エリート主義」や「反民主主義」といった批判を浴びることになりました。しかし、専門性の高い現代社会において、教養や批判的思考の重要性が改めて認識されていることも事実です。オルテガの思想は、現代社会における「真の教養」のあり方を考える上で、重要な視点を提供してくれると言えるでしょう。
* **明快な文章と論理構成**: オルテガは、哲学的なテーマを扱っていながらも、平易で明快な文章で論理的に自身の思想を展開しています。そのため、専門家以外の人々にとっても読みやすく、多くの読者に影響を与えました。
批判的な評価
* **「大衆」の定義の曖昧性**: オルテガは「大衆」を「自分自身で満足し、自分を超えたものを求めない人間」と定義していますが、この定義は抽象的であり、具体的な社会集団との対応が明確ではありません。そのため、「大衆」という言葉が特定の社会階層に対する蔑称として用いられているという批判があります。
* **エリート主義と反民主主義的な側面**: 前述のように、オルテガの「少数のエリートによる社会指導」という主張は、エリート主義的であり、民主主義の原則に反するものであるという批判があります。
* **歴史的文脈の軽視**: 本書は、スペインの特定の歴史的文脈の中で書かれたものであり、その主張をそのまま普遍化することには問題があります。オルテガの「大衆」批判は、当時のスペイン社会における大衆運動の台頭を背景としており、その点を考慮せずに現代社会に当てはめることには無理があります。