## オルテガの大衆の反逆と人間
オルテガにおける「大衆」とは
ホセ・オルテガ・イ・ガセットの主著『大衆の反逆』（1930年）において、 「大衆」とは社会的な階層や集団を指すのではなく、 ある種の **精神的な状態** を指します。具体的には、 自分自身に何の疑いも持たず、 生まれながらにあらゆる権利を持つと信じ込み、 他者への配慮や自己抑制を欠いた人間像を指します。 オルテガは、このような「大衆人」が20世紀初頭のヨーロッパ社会において増加し、 伝統的な価値観やエリート主義を脅かしている と危機感を抱いていました。
「大衆の反逆」の具体的な内容
オルテガは、 専門知識や教養を持たない「大衆人」が、 民主主義の風潮に乗じて社会の指導的な立場に 進出していく状況を 「反逆」と表現しました。 そして、 専門家や知識人の意見を軽視し、 自分たちの浅薄な考え方に基づいて 社会を動かそうとする「大衆人」の台頭を 厳しく批判しました。
「専門家」と「大衆人」
オルテガは、社会をより良い方向へ導くためには、 専門的な知識や教養を身につけた 「専門家」の存在が不可欠であると考えていました。 専門家は、 長年の努力によって獲得した高度な知識や技術を駆使し、 社会に貢献する存在です。 一方で、「大衆人」は、 そうした専門家の努力を理解せず、 自分たちの浅薄な考え方を押し付ける存在として 描かれています。
オルテガの主張が提起した問題
オルテガの主張は、 発表当時から多くの議論を巻き起こしました。 特に、 「大衆」という言葉を用いて、 ある特定の人間像をネガティブに描いたこと、 また、 エリート主義的な視点から民主主義を批判したことは、 多くの批判を浴びることになりました。 しかし、 オルテガの主張は、 現代社会における大衆社会化やポピュリズム現象を考える上で、 示唆に富む側面も持ち合わせています。