オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の評価
オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の概要
スウェーデンの経済学者、ベルトィル・オリーンが1933年に発表した著書「地域間貿易と国際貿易」の中で提唱した貿易理論です。この理論は、従来の比較優位説を発展させ、要素賦存論を取り入れることによって、より現実的な貿易のパターンを説明しようと試みました。
主要な論点
オリーンの貿易理論は、以下の3つの主要な論点を柱としています。
* **要素賦存の違いによる比較優位**: 各国は、労働、資本、土地などの生産要素を異なる割合で保有しています。オリーンは、各国が相対的に多く保有する生産要素を 集中的に使用する財の生産において比較優位を持つと主張しました。
* **要素価格の均等化**: 国際貿易は、財の移動だけでなく、生産要素に対する需要と供給にも影響を与えます。貿易の結果、要素の豊富 な国ではその要素の価格が下落し、要素の希少な国では価格が上昇します。このプロセスを通じて、国際的に要素価格は均等化に向かうとされます。
* **地域貿易と国際貿易の類似性**: オリーンは、地域間貿易と国際貿易の本質的な違いはないと主張しました。地理的な距離や政治的な境界線は、貿易のパターンに影響を与えるものの、基本的なメカニズムは同じであると彼は考えました。
評価
オリーンの貿易理論は、国際貿易のメカニズムをより深く理解するための重要な視点を提供しました。要素賦存の違いに焦点を当てることで、比較優位説だけでは説明できない貿易パターンを解明できる可能性を示しました。
批判
オリーンの理論は、以下のような点で批判を受けています。
* **現実の貿易パターンとの乖離**: 現実の世界では、要素賦存の違いだけで貿易パターンを完全に説明することは困難です。技術革新、規模の経済、政府の政策なども貿易に大きな影響を与えます。
* **要素価格の不完全な均等化**: 要素の移動には、地理的な距離、言語の壁、移民規制などの障壁が存在します。そのため、要素価格は国際的に完全に均等化されることは稀です。
* **仮定の単純化**: オリーンの理論は、2国・2財・2要素のモデルなど、現実を単純化した仮定に基づいています。現実の世界はより複雑であり、モデルの単純化は分析結果の妥当性を損なう可能性があります。