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オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の発想

## オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の発想

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従来の貿易理論への疑問

 19世紀に確立されたリカードの比較生産費説は、労働生産性のみを考慮し、労働は各国において同一の質とみなすことで、国際貿易の発生原因を説明しました。この理論は、各国がそれぞれ異なる産業において比較優位を持つことで、自由貿易を通して相互に利益を得られることを示しました。

 しかし、20世紀初頭、スウェーデンの経済学者エリ・ヘクシャーとベルティル・オリーンは、リカードの理論では現実の国際貿易を十分に説明できない点があると指摘しました。彼らの疑問は主に以下の点に集約されます。

* **労働以外の生産要素の影響**:現実の世界では、労働以外にも、土地、資本、技術といった様々な生産要素が貿易に影響を与えます。リカードの理論は労働のみに焦点を当てており、他の要素がどのように貿易パターンを形成するか説明できません。
* **同一国内における生産要素の移動可能性**:リカードの理論は、生産要素が国と国との間を移動できないことを前提としています。しかし、現実には資本や労働力はある程度国境を越えて移動することが可能です。
* **同一国内における要素賦 endowment の違い**:国土の広さ、気候、資源埋蔵量などの違いにより、各国は異なる要素賦存状態にあります。リカードの理論は、この要素賦存の違いが貿易に与える影響を考慮していません。

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要素賦存説の提唱

 ヘクシャーとオリーンは、上記の疑問点を解消するために、新たな貿易理論を構築しました。これが「要素賦存説」と呼ばれるものです。要素賦存説は、国際貿易の発生原因を、各国における**生産要素の相対的な賦存量の差**に求めました。

 具体的には、各国は、相対的に豊富に存在する生産要素をより多く使用する財を輸出する傾向にあり、逆に、相対的に希少な生産要素を必要とする財を輸入する傾向にあります。例えば、労働力が豊富にある国は労働集約的な製品を、資本が豊富な国は資本集約的な製品を輸出すると考えられます。

 要素賦存説は、リカードの理論をより現実的なものへと発展させ、国際貿易の複雑なメカニズムをより深く理解することに貢献しました。

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地域貿易への適用

 オリーンは著書「地域および国際貿易」の中で、要素賦存説を国際貿易だけでなく、**地域間の貿易にも適用できる**ことを示しました。彼は、地域間においても、要素賦存の違いが貿易パターンに影響を与えると考えました。

 例えば、ある地域では気候や土壌条件によって特定の農作物の生産に適しており、他の地域では工業製品の生産に適した資源や労働力が豊富に存在するとします。このような要素賦存の違いによって、地域間で農作物と工業製品が取引されるようになり、地域経済が発展していくと考えられます。

 オリーンは、要素賦存の違いが地域間の分業と貿易を促進し、ひいては地域経済の発展に貢献すると主張しました。

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