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エーコの薔薇の名前の対極

エーコの薔薇の名前の対極

「客観性」と「百科全書的知識」への傾倒:フランス啓蒙主義の書物

ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』は、中世の修道院を舞台に、迷宮のような図書館と謎めいた殺人事件を通して、知識の相対性、解釈の多様性、権力と真実の複雑な関係を描いた作品です。その特徴として挙げられるのは、

* **物語の語り口**: 一人称視点で語られ、語り手の主観的な経験や解釈が色濃く反映されている。
* **テーマ**: 中世の思想や文化、宗教観が色濃く反映され、神秘主義、異端審問、禁書といった要素が重要な役割を果たす。
* **文体**: 難解で重厚な文体で書かれ、ラテン語や中世の哲学、神学に関する知識が読者に求められる。

対極に位置する「百科全書」

一方、『薔薇の名前』の対極に位置する作品として、フランス啓蒙主義期の記念碑的著作である**百科全書**が挙げられます。

* **目的**: 18世紀のフランスで、ディドロやダランベールを中心とした啓蒙主義の思想家たちによって編纂された、網羅的な知識の集積を目指した書物。
* **特徴**: 合理主義、経験主義、科学的思考を重視し、客観的な知識の普及を目指した。
* **構成**: アルファベット順に項目が並んでおり、読者は誰でも簡単に必要な情報にアクセスできるよう設計されている。

「薔薇の名前」との対比

『薔薇の名前』が、中世的な思想や神秘主義を背景に、知識の不確かさと解釈の多様性を描き出したのに対し、『百科全書』は、啓蒙主義の精神に基づき、客観的な知識の体系化を目指した点で、両者は対照的な作品と言えるでしょう。

* **知識への姿勢**: 『薔薇の名前』は、知識の不完全性、多義性、そして時には危険さを強調する一方で、『百科全書』は、知識は共有可能であり、世界を理解するためのツールであると主張する。
* **宗教観**: 『薔薇の名前』では、宗教が知識と権力に密接に結びついている様子が描かれ、その関係性がもたらす闇が浮き彫りにされる。対照的に、『百科全書』は、理性と科学に基づいた世界観を提示し、宗教的な dogma からの脱却を目指している。

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