エリアーデの聖と俗の位置づけ
エリアーデの主著における位置づけ
『聖と俗』は、ルーマニア出身の宗教史家、ミルチャ・エリアーデの主著と目される『宗教的観念とイメージの歴史』(原題:Traité d’histoire des religions、1949年)の要約版として、1957年にフランス語で刊行されました(原題:Le Sacré et le profane)。
エリアーデは宗教学を専門とする研究者でしたが、宗教学という学問分野の枠にとどまらず、哲学、歴史学、人類学、民族学など多岐にわたる学問分野に影響を与えた20世紀を代表する思想家の一人として知られています。
聖と俗の対比概念
本書でエリアーデが示した「聖」と「俗」という対比概念は、あらゆる宗教現象の根底に存在する普遍的な構造原理として、その後の宗教研究に多大な影響を与えました。
エリアーデによれば、「聖」とは、日常的な世界である「俗」とは異質な、超越的な現実を表す概念です。そして、人間は「聖」との遭遇を通して、世界に意味と価値を見出し、自らの存在を根源的に規定されるという宗教経験を獲得するとされます。
具体的な事例
エリアーデは本書において、世界各地の宗教における「聖」の顕現形態を、具体的に、かつ比較宗教学的な観点から分析しています。
例えば、オーストラリアの先住民アボリジニにおける「聖なる時間」、古代インドの宇宙創造神話、あるいは現代社会におけるスポーツや映画などの大衆文化の中にも、「聖」の構造を見出すことができることを指摘しています。
後の研究への影響
『聖と俗』で展開されたエリアーデの宗教論は、その後の宗教現象の解釈に大きな影響を与え、現代における宗教の役割や意味を理解する上で重要な視点を提供しています。
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