ウルフのオーランドーの対極
**1. 時間と変化**
「オーランドー」は、時間と変化を主要なテーマとして扱っており、主人公オーランドーは数世紀にわたる人生の中で性別さえも超越します。作品全体を通して、歴史の流れ、社会の変遷、個人のアイデンティティの流動性が鮮やかに描かれています。
対照的に、ジェームズ・ジョイスの「ユリシーズ」は、1904年6月16日というたった一日を描写し、時間と変化を最小限に抑えています。ダブリンという限定された空間の中、登場人物たちの思考や行動は、過去と現在の断片に彩られながらも、一日の流れに沿って展開されます。
**2. 現実と幻想**
「オーランドー」は、現実と幻想が入り混った世界観を持っています。オーランドーの性別変容、数百年にわたる人生、妖精や魔法の存在など、現実を超越した要素が物語の中核をなしています。
一方、「ユリシーズ」は、写実主義的な手法で現実を克明に描写することに重点を置いています。登場人物たちの意識の流れや日常的な出来事を詳細に描くことで、人間の心理や社会のリアリティを浮き彫りにしています。
**3. 語り口と文体**
「オーランドー」は、風刺的でユーモラスな語り口が特徴的です。作者ヴァージニア・ウルフは、伝統的な物語の形式を意図的に崩し、ウィットに富んだ言葉遊びや風刺を交えながら、社会規範やジェンダーの固定観念に疑問を投げかけています。
「ユリシーズ」は、意識の流れを模倣した複雑で難解な文体が特徴です。ジョイスは、登場人物たちの思考や感覚をそのまま言葉で表現しようとする「意識の流れ」の手法を駆使し、読者に新しい文学体験を提供しています。