ウエルズの世界史概観の表象
ウエルズの描く歴史観
H・G・ウェルズが1920年に発表した『Outline of History(邦題：世界史概観)』は、人類史を先史時代から第一次世界大戦後まで通史として描いた壮大な歴史書です。 世界中でベストセラーとなり、ウェルズを一躍有名にした本書は、当時の歴史観に大きな影響を与えました。
包括的な歴史叙述
ウェルズは本書において、西洋史だけでなく、東洋史、アフリカ史など、世界各地の歴史を包括的に扱っています。これは、当時の歴史書が西洋中心主義的な視点で書かれることが多かった中で、画期的な試みでした。ウェルズは、人類史を一つの物語として捉え、特定の民族や文化に偏ることなく、世界史全体を視野に入れようとしました。
科学的思考に基づく歴史解釈
生物学者としてのバックグラウンドを持つウェルズは、進化論的な視点を取り入れ、人類史を「進歩」の過程として描きました。彼は、人類が原始的な状態から文明社会へと発展していく過程を、科学技術の進歩や社会制度の発展と関連付けて説明しています。
社会主義的視点からの文明批判
ウェルズは、本書において、戦争や貧困、格差などの社会問題を取り上げ、資本主義社会の矛盾を鋭く批判しています。彼は、人類がより良い未来を創造するためには、国際的な協力と社会正義の実現が不可欠であると主張しました。
歴史教育の重要性を強調
ウェルズは、本書の執筆を通じて、歴史を学ぶことの重要性を訴えました。彼は、過去の出来事や人物について知ることで、現在をより深く理解し、未来へ向けてより良い選択ができるようになると考えました。
『世界史概観』の影響と評価
『世界史概観』は、出版当時、大きな反響を呼び、世界中で翻訳されました。 本書は、歴史学研究の進展に影響を与えただけでなく、一般の人々の歴史に対する関心を高める役割も果たしました。 一方で、その包括的な歴史叙述は、時に表面的であると批判されることもあります。 また、進化論的な歴史観や社会主義的な視点は、現代の視点から見ると、時代的な限界があるという指摘もあります。
現代における『世界史概観』
今日でも、『世界史概観』は、人類史を概観するための入門書として、あるいは、20世紀初頭の知識人の歴史観を知るための資料として、一定の価値を認められています。