## ウェーバーの職業としての政治の対極
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**政治における情熱の重要性**
マックス・ウェーバーの「職業としての政治」は、政治における合理性や責任倫理を重視し、情熱や感情を抑制すべきだとする立場をとっています。 このウェーバーの思想の対極に位置する歴史的名著として、いくつか挙げることができますが、その中でも特に重要なのは、**ニッコロ・マキャベリの『君主論』**でしょう。
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**マキャベリ『君主論』における政治観**
1532年に出版された『君主論』は、ルネサンス期のイタリアで活躍した政治思想家ニッコロ・マキャベリによって書かれた政治論の古典です。 マキャベリは、当時のイタリア半島が小国分立状態にあり、外国勢力の介入を招いて混乱していた状況を憂い、 強力な君主による統一国家の樹立を理想としていました。
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**「君主論」と「職業としての政治」の対比**
『君主論』は、君主が権力を獲得し、維持するために取るべき行動を、冷徹な現実主義の視点から論じています。 マキャベリは、政治の世界では道徳や倫理よりも、権力闘争の現実が優先されると考えました。
ウェーバーが「職業としての政治」で提示した、倫理や責任に基づく政治家像とは対照的に、『君主論』は目的のためには手段を選ばない、冷酷ともいえる君主像を提示しています。
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**政治における情熱:対立と共存の可能性**
マキャベリは、『君主論』の中で、君主は民衆を掌握するために、時には虚偽や欺瞞を用いることも必要だと説いています。 また、恐怖によって支配する方が、愛情によって支配するよりも容易であるとも述べています。
このようなマキャベリの思想は、倫理や道徳を重視するウェーバーの政治観とは相容れないように思えるかもしれません。 しかし、マキャベリは単なる権力主義者ではなく、現実の政治における厳しい選択を冷徹に見つめ、理想と現実の双方を踏まえた上で、 より良い政治を実現するための指針を示そうとしたと解釈することもできます。