## ウィーナーのサイバネティックスの構成
第Ⅰ部 サイバネティックスとは
本書の導入部として、サイバネティックスという新しい学問分野の創設を宣言し、その背景や目的、主要な概念について概説しています。
第1章では、19世紀末から20世紀前半にかけて起こった科学技術の革新が、従来の学問分野の枠組みを超えた新しい研究領域を生み出したことを指摘します。特に、通信工学、制御工学、計算機科学などの発展が、生物と機械の双方に共通する情報と制御のメカニズムを解明する道を開いたことを強調します。
第2章では、サイバネティックスの語源や定義について解説します。ギリシャ語で「舵手」を意味する「kybernetes」に由来するこの言葉が、機械と生物の双方における情報と制御の過程を統一的に理解するための学問分野を指すことを明確にします。
第3章では、サイバネティックスの中核概念である「フィードバック」について詳述します。フィードバックとは、システムの出力の一部を入力側に戻すことで、システム全体の動作を調整する仕組みのことです。ウィーナーは、フィードバックが生物の行動制御や機械の自動制御において重要な役割を果たしていることを具体的な事例を挙げて説明します。
第Ⅱ部 機械における情報と制御
第Ⅱ部では、通信工学、計算機科学、制御工学といった分野における具体的な技術や理論を、サイバネティックスの視点から考察します。
第4章では、情報を定量的に扱うための基礎概念である「エントロピー」について解説します。エントロピーは、メッセージの不確実性や情報量を表す尺度であり、通信の効率や情報処理の限界を理解する上で重要です。
第5章では、電話やラジオなどの通信技術における情報伝達の仕組みについて説明し、ノイズの影響や情報圧縮の技術について論じます。
第6章では、計算機の基本的な構造と動作原理について解説し、計算機の能力と限界について考察します。
第7章では、自動制御システムの設計理論について解説し、フィードバック制御の安定性や精度に関する問題について論じます。
第Ⅲ部 人間における情報と制御
第Ⅲ部では、人間の神経系や感覚器官、行動様式といった生物学的現象を、サイバネティックスの視点から分析します。
第8章では、人間の神経系を情報処理システムとして捉え、神経細胞の働きや神経回路の構造について解説します。
第9章では、視覚、聴覚、触覚などの感覚器官が外界からの情報をどのように受容し、処理しているのかについて論じます。
第10章では、人間の運動制御の仕組みについて解説し、フィードバック制御の観点から歩行や物体操作などの動作を分析します。
第11章では、人間の思考や学習といった高次認知機能について考察し、サイバネティックスの観点からこれらの機能を理解する可能性を探ります。
第Ⅳ部 社会における情報と制御
第Ⅳ部では、社会システムや組織における情報伝達、意思決定、制御のメカニズムを、サイバネティックスの視点から分析します。
第12章では、社会を構成する個々の人間を要素とする巨大なシステムとして捉え、情報の流れや相互作用が社会全体の動態にどのような影響を与えるかを考察します。
第13章では、企業や政府などの組織における意思決定プロセスについて分析し、情報伝達の効率性や意思決定の質を高めるための方法論を探ります。
第14章では、サイバネティックスの倫理的な側面について考察し、機械と人間の関係、情報技術の社会的影響、責任ある技術開発のあり方などについて論じます。
これらの章構成を通じて、ウィーナーは機械、生物、社会という一見異なる領域に共通する情報と制御の原理を明らかにし、サイバネティックスという新しい学問分野の広がりと可能性を示しました。