## ウィーナーのサイバネティックスと時間
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時間と情報
ノーバート・ウィーナーのサイバネティックスにおいて、時間は非常に重要な概念です。ウィーナーは、通信と制御の過程において時間が不可欠な要素であることを強調しました。彼の主張の中心にあるのは、システムが効果的に機能するためには、過去、現在、未来の情報を考慮する必要があるということです。
ウィーナーは、過去の情報を基に未来を予測し、現在の行動を決定するフィードバックの概念を重視しました。これは、過去の情報が現在の状態に影響を与え、現在の状態が未来の状態を決定づけるという因果関係に基づいています。
しかし、ウィーナーは古典物理学的な決定論的な時間観には異論を唱えました。彼は、未来は完全に予測可能ではなく、確率的な要素を含んでいると主張しました。これは、情報が常に完全ではなく、ノイズや不確実性が存在するためです。
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時間の流れとエントロピー
ウィーナーは、時間の流れとエントロピーの関係についても考察しました。エントロピーとは、システムの無秩序の度合いを表す概念です。熱力学第二法則によれば、孤立したシステムのエントロピーは時間とともに増大していきます。
ウィーナーは、情報を秩序、エントロピーを無秩序と結びつけ、情報伝達と処理がエントロピーの増大と密接に関係していることを示唆しました。すなわち、情報伝達や処理の過程で、常にエントロピーの増大、つまり情報の散逸や劣化が起こると考えられます。
これは、時間が一方通行にしか進まないこと、つまり過去に戻れないことと関連しています。過去は既に確定しており、その情報はエントロピーの増大とともに散逸してしまい、完全に復元することは不可能です。
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時間とシステムの安定性
サイバネティックスにおいて、時間の概念はシステムの安定性にも深く関わっています。フィードバックシステムにおいて、時間の遅延はシステムの不安定化要因となる可能性があります。
例えば、制御システムにおいて、現在の状態に関する情報が遅れてフィードバックされると、システムは過剰に反応したり、振動したりする可能性があります。これは、システムが過去の情報に基づいて行動するため、現在の状況に適切に対応できなくなるためです。
ウィーナーは、安定したシステムを構築するためには、時間の遅延を最小限に抑え、リアルタイムに近い情報に基づいて制御を行うことが重要であると指摘しました。