## イプセンのペール・ギュントが扱う社会問題
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自己欺瞞と責任逃れ
ペール・ギュントは、夢想家で空想好きの青年として描かれ、現実逃避を繰り返しながら自己中心的な人生を送ります。彼は、自分の都合の良いように事実を歪曲したり、責任を転嫁したりすることで、自己欺瞞に陥っていきます。
例えば、彼は、求婚していたイングリッドを結婚式当日に捨てて山へ逃げ込みます。これは、自分の欲望に忠実であろうとするあまり、他者への責任を放棄した行動として解釈できます。
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物質主義と精神性の欠如
ペール・ギュントは、劇中で様々な事業に手を出し、富や名声を求めて世界中を旅します。しかし、その根底には、真の幸福や精神的な成長への希求は見られません。
彼が追い求めるのは、あくまでも物質的な豊かさや社会的な成功であり、それは、当時の資本主義社会における物質主義的な価値観を象徴していると言えます。
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伝統と近代化の狭間における葛藤
19世紀後半のノルウェーは、近代化の波に晒され、伝統的な価値観と新しい価値観との間で揺れ動いていました。ペール・ギュントもまた、古い農村社会の価値観と、近代社会の個人主義的な価値観との間で葛藤を抱えています。
彼は、故郷の伝統や家族の絆を捨ててまで、自己実現を求めて世界に飛び出します。しかし、最終的には、自分のルーツである故郷に回帰することを決意します。このことは、伝統と近代化の狭間で揺れ動く、当時のノルウェー社会の姿を反映していると言えるでしょう。
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自己犠牲と無償の愛
ペール・ギュントとは対照的に、彼を生涯愛し続けるソルヴェイグの姿は、自己犠牲と無償の愛を象徴しています。彼女は、ペール・ギュントがどんなに身勝手な行動を取っても、彼を信じ続け、彼の帰りを待ち続けます。
彼女の献身的な姿は、自己中心的なペール・ギュントの生き方と対比をなし、真の愛や人間の心の美しさを際立たせています。